フローラとは善玉菌や悪玉菌、日和見菌といったさまざまな細菌が花畑のように細菌叢をつくったもので、腸内フローラという言葉から認知されるようになりました。体内への入口である 口内フローラ (口腔内フローラ)を整えることは健康管理に重要な意味を持ちます。
口内フローラ管理で健康に!
口内フローラと腸内フローラ
口内フローラと腸内フローラには決定的な違いがあります。それは口内では腸内と違い、細菌が血管に侵入することが容易であるという点です。腸内フローラでもまれに血管に悪玉菌が侵入することがありますが、肝臓に運ばれて解毒されます。
しかし口から侵入した細菌は解毒されずに90秒程度で全身へと運ばれてしまいます。口内フローラが乱れて虫歯や歯周病が発生すると、炎症が起きたり傷口ができ、さまざまな病気を引き起こします。
そのため、口内フローラを整えて細菌をコントロールし、歯周病や虫歯などを防ぐことが、健康管理に直接影響するのです。
口内フローラの乱れと病気
口内フローラが乱れた時に最初に出やすい症状は、虫歯や歯周病です。悪化すると細菌によって血管内壁が弱り、炎症が発生します。炎症をしずめようとする防御反応によりLDLコレステロールが酸化して悪玉コレステロールに変化し、患部を覆うように溜まって内壁にコブができます。
こうして血管内が狭まり動脈硬化を引き起こすのです。動脈硬化に気付かずに放置したことから、血栓が脳や心臓の血管内にできて脳卒中や心筋梗塞につながった例も少なくありません。
歯周病や虫歯は他にも多くの病気の引き金となります。糖尿病、冠動脈疾患、関節リウマチなどの全身疾患の他に、早産や胎児の低体重化など、妊婦への影響も近年の研究で明らかにされています。
たとえば、筋肉細胞や脂肪細胞による糖の吸収効率が低下し、インスリン抵抗性が悪化することから糖尿病を誘発します。また、悪玉菌が影響して子宮の収縮が起きることから、早産などの原因になると考えられています。
さらに、歯原性菌血症による血管内の慢性的な炎症により、細胞内の遺伝子が後天的な変化を起こすといわれています。その結果、がん抑制遺伝子が機能を失い、細胞のがん化を促進するという報告もあります。
加えて、口の中の悪玉菌は唾液量の減った高齢者に多くなり、誤嚥性の肺炎の原因になるだけでなく、歯周病や虫歯によって咀嚼回数が減ると認知症を発症しやすくなることもわかってきました。咀嚼による刺激は脳に大量の血液を供給し、活性化させる働きがあるからです。
対策
口内フローラを整えるためには歯や舌などを清潔に保つことが第一です。唾液が不足すると細菌が増殖するので、唾液の分泌を促進することは健康的な生活習慣だといえます。口をすぼめたり表情筋を動かすストレッチも、唾液腺を刺激して唾液がでやすい状態をもたらします。
無意識に口で呼吸をしてしまう人は注意が必要で、日頃から鼻呼吸をこころがけ、口を閉じるように気をつけてください。できる限りシャワーだけでなく湯船につかるようにし、副交感神経を活性化させることも効果的です。
うつむいた姿勢は唾液腺の出口が圧迫されてしまうので、パソコンやスマートフォンの操作を控えるように意識します。エアコンや扇風機、暖房器具の使用時も、口腔内が乾燥しないように注意してください。
言うまでもなく、口内フローラを整えるためには歯みがきが重要になります。歯ブラシの他に歯間ブラシやデンタルクロスを活用して、歯の4面を磨くようにしてください。舌ブラシを使って舌の汚れを取ることも有効ですが、しっかりとすすぐことも大切です。
ただし、いくらこまめな歯みがきが理想とはいえ、磨きすぎて口内を傷つけてしまっては意味がありません。また、直接口内に入れるものなので、衛生面に留意してハブラシやコップなどをすべて清潔に保たなければいけません。
食習慣
口内フローラを正常に保つためには、食習慣も見直しが必要です。フッ素やフラボノイド、ポリフェノールを含むお茶や紅茶を飲むことは有効で、特にカテキンは虫歯菌の増殖を抑える効果があります。
虫歯菌の効果をおさえる効果はカカオポリフェノールにもあるといわれ、意外にもココアやチョコレートも歯に良い食品です。もっとも、砂糖は虫歯菌の増殖を促進するので注意が必要です。
白米の主成分であるでんぷんなどの多糖類は、口腔内で唾液により麦芽糖に分解され、悪玉菌のエサになります。玄米や雑穀を混ぜて食べるほうが効率よく糖質コントロールができ、口内フローラを整えることにもつながります。
口内フローラが正常に保たれることは、口臭の予防になります。したがって、口臭がキツい場合は口内フローラの悪化や病気への派生が疑われる状態なので、口臭は健康のバロメータになるのです。
まとめ
口内フローラ管理で健康に!
口内フローラと腸内フローラ
口内フローラの乱れと病気
対策
食習慣