「DHAの効果はどこまで信用できるか(前編)では、日本においてのDHAの取り扱いについてご説明いたしました。後編では、 DHA が脳に及ぼす影響や脳梗塞や心疾患による死亡リスクに対する 効果 、認知症に対する予防効果についてご説明いたします。
DHAの効果はどこまで信用できるか(後編)
DHAの脳に対する効果
脳細胞の細胞壁の脂質はDHAが選択的に用いられています。また、脳内の神経系が確立するためにはDHAが必要です。
この事実はDHAが入っていない人工乳で育った乳児と母乳で育った乳児の6歳児の知能指数を比較して場合には有意に母乳で育った乳児であった方が高くなっていました。
DHAの脳梗塞や心疾患による死亡リスクに対する効果
コレステロール低下作用があることから、脳梗塞や心疾患による死亡リスクの低下が期待されています。実際には高コレステロール血症でスタチン系の薬剤を飲んでいる人の方がリスクを軽減することが分かっています。
高LDLコレステロール血症でない人では、脳梗塞や心疾患よる死亡リスクはもともと低いことからそのような人が飲んでも死亡リスクの低下は得られません。
認知症に対する予防効果
乳児の脳神経系確立のためにはDHAが必要であること、脳細胞は再生することが明らかになったことから、認知症の予防効果を期待して多くの比較試験が行われています。
結果としては、75歳から飲み始めても認知症になるリスクは減りませんでした。軽度の認知症を対象とした試験でも効果はみられませんでした。
認知症には血管性認知症とアルツハイマー型認知症があります。欧米ではアルツハイマー型認知症が多くなっており、試験もアルツハイマー型認知症が対象になっています。
血管性認知症は日本ではアルツハイマー型認知症よりも発症率が高いと言われていましたが、最近の検査方法の進歩によりかつては血管性認知症と診断されていた中にアルツハイマー病が多い可能性があることが明らかになりつつあります。
DHAの効果は血管性認知症により高いと考えられますが、アルツハイマー型認知症に比べて試験はほとんど行われていません。
DHAの問題と将来性
DHAに関しては、日本人の食事摂取基準では取り過ぎに対する研究が必要と考えられるが、現在のところ研究が少ないことから定めることはできないと報告しています。
ビタミンEの摂取過剰が死亡リスクを逆に上げてしまうことが明らかになっています。DHAにもその可能性があります。
日本では欧米に比べて食事からDHAを取る量が多くなっています。これは魚類の摂取量の差だと言われています。
しかし、日本人の魚類摂取量は明らかに減少傾向にあります。漁獲量の減少と海洋汚染の問題もあります。DHAは体内で合成できない必須脂肪酸であることから、DHAがビタミンCのようにサプリメントから摂取する必要がある時代が来るかもしれません。
まとめ
DHAの効果はどこまで信用できるか(後編)
DHAの脳に対する効果
DHAの脳梗塞や心疾患による死亡リスクに対する効果
認知症に対する予防効果
DHAの問題と将来性