異物を直接体内に入れる臓器移植には免疫はその臓器を排除する方向に働きます。また、自己と異物を区別する機能が異常となって自己を攻撃するのが自己免疫疾患です。アレルギー反応は免疫反応が体に異常を引き起こすものです。
臓器移植、自己免疫疾患、アレルギー反応は免疫の無駄あるいは過剰な反応といえます。このような免疫の働きを抑制する薬剤を 免疫抑制剤 と呼びます。
免疫が自己を攻撃するのを抑えるのが免疫抑制剤です
免疫抑制剤が適応となる疾患
免疫抑制剤が適応となる疾患には、臓器移植に伴う宿主免疫による臓器の攻撃、自己免疫疾患、アレルギー反応があります。
広い意味での臓器移植でよく使われているのが、輸血です。輸血の場合にはA、B、OとRhと呼ぶ免疫の方が一致すれば問題はほとんど起こりません。
遺伝的に免疫型が一致すると移植することができるのが、骨髄移植です。この免疫型は親戚でなくとも一致する場合があります。
両親兄弟姉妹が移植相手にならない場合には、他人から移植することができるので、健康なヒトが骨髄移植可能な免疫型を登録することによって必要な骨髄を提供することを同意しておくのが骨髄バンクです。
骨髄以外の臓器を移植する場合には、急を要することが多く、一時的に免疫機能を抑えて、移植した臓器に対する攻撃を抑えることになります。この薬剤が免疫抑制剤です。
自己免疫疾患は免疫が自己と異物を判別する能力に異常をおこして、自分の臓器を攻撃してしまい、臓器に損傷が起こる病気です。関節リウマチ、ループル腎炎、潰瘍性大腸炎、多発性筋炎、皮膚筋炎が原因の間質性肺炎が免疫抑制剤の対象になります。
アレルギー反応は免疫による抗原抗体反応が過剰に発現し、接触面の発赤、かゆみ、涙がでる軽いものから、摂取することにより、心停止にいたる場合があるアナフィラキシーショックをおこすものです。
免疫療法剤の使い方
骨髄移植の場合には、免疫型を合わせても、移植片対宿主病という免疫反応が生じる場合があります。この場合には免疫抑制剤が用いられます。
臓器移植の場合には、免疫に選る移植臓器の拒絶反応は必発することから免疫抑制剤は必須となります。
免疫抑制剤を一度使うと、止めると病気が再発することから、一生免疫抑制剤を飲むことになります。最近ではステロイドと併用することによって免疫抑制剤を止めることができるという報告もありますが、研究レベルの方法です。
自己免疫疾患の場合には関節リウマチには免疫の一部を抑制することで治療可能となるので、まずはそのような薬剤を用います。関節リウマチの薬剤には色々な作用機序のものがありますので、免疫抑制剤は最後の手段となります。
ループス腎炎、潰瘍性大腸炎、多発性筋炎、皮膚筋炎の場合にはステロイドが有効なため、免疫抑制剤はステロイドが効かない症例あるいはステロイド依存症になったときに限られます。
アレルギー反応対して、局所のアレルギー反応(花粉症など)ではかゆみなどをとる対症療法や減感作療法(異物をきわめて少なき量を長期に与えて、異物として認識することがなくなる用にする療法)があります。しかし、局所のアレルギー反応に対しては免疫抑制剤の軟膏が適応となります。
免疫抑制剤の副作用
免疫抑制剤の副作用として重篤なものは、異物を排除する機構を抑えていることから、普段はすぐに排除することができている弱い細菌による感染症です。この感染症を日和見感染と呼びます。
日和見感染をおこす細菌は、抗菌剤に対して耐性を持つことが多いことから感染が重症化することが多くなります。
その他、腎機能障害、血糖値の上昇、血圧の上昇などが現れることがあります。他の薬剤では副作用が発生した場合には薬剤を止めることが第一となりますが、免疫抑制剤の場合には薬剤を止めることによって、自己が免疫によって攻撃されることになります。
従って、十分な観察を行い副作用が悪化する前に対症療法を行うことが大切です。
後発性医薬品の免疫抑制剤に対する注意
免疫抑制剤の軟膏は既に後発性医薬品が発売されています。しかし、一部の後発性医薬品では、塗布時の刺激感が強いことが判明しました。これは先発性の添加物に含まれている成分が後発性医薬品に含まれていなかったことから発生することから判明しました。
この問題は、薬効成分が同一の分布(試験管内、ヒト)を示せば生物学的同等として後発医薬品として承認される現在の後発性医薬品の承認制度に一石を投げかけました。孤発性医薬品の場合にはMRが少ないことから副作用情報の収集率も低く、発見が遅れることになります。
現在のところ後発性医薬品で問題が起こっているのは免疫抑制剤のみです。このため、後発性医薬品の承認基準や副作用収集に対する規定は変化していません。
もし、先発医薬品から最近認可された後発性医薬品に変更するときに不安がある場合には、オーソライズドジェネリックを使うことをお勧めします。オーソライズドジェネリックとは先発医薬品と有効成分だけでなく、添加物も同一の医薬品です。
まとめ
免疫が自己を攻撃するのを抑えるのが免疫抑制剤です。
免疫抑制剤が適応となる疾患
免疫療法剤の使い方
免疫抑制剤の副作用
後発性医薬品の免疫抑制剤に対する注意