免疫 (Immunity)とは「疫」から免除される仕組みという経験則から始まっています。「疫」とは感染症のことです。時代劇で「疫病」という言葉を耳にしたことがあると思います。「疫病」とは「はやり病」(流行病)のことです。
現在の解釈では免疫とは自己と非自己を認識する機能や仕組みを指すとなっています。排除すべきものを「非自己」、守るべきものを「自己」と呼びます。
外部から侵入してくる異物をやっつける仕組みが免疫です(前編)
自然免疫と獲得免疫
免疫には生まれたときからその病気にかからない自然免疫(先天性免疫)と一度病気にかかり、治癒すると2度と同じ病気にはかからない獲得免疫(後天性免疫)に二つがあります。
自然免疫とは非自己(異物)を何かを認識することなく、非自己に対して攻撃するものです。これは白血球が主な働き手になります。異物が体内に侵入すると、一つの白血球がその異物を包み込み異物を無効化します。これには過酸化物が用いられます。
さらに白血球は、その他の白血球を呼ぶ信号を出し、白血球を集めます。集まった白血球がその他の異物を包み込んで無力化します。白血球が異物を無効化することを貪食と呼びます。
異物を貪食した白血球は死亡します。少数の場合には体内で処理されますが、処理できないと膿(うみ)になって体の中にたまることがあります。
異物を貪食した白血球は死亡する前に他の白血球を呼ぶ以外に発熱物質を出します。インフルエンザのときに発熱するのは、発熱によってウイルスを殺すためです。そのため、少しの熱で解熱鎮痛剤を使うことは、ウイルスを殺す力を落とすことになります。
もちろん40度以上の熱は体の他の部分へ影響を与えるので、解熱鎮痛剤を与える必要があります。また、頭を冷やすのは、脳が影響を受けるのを避けるという大きな意味が別にあります。
獲得免疫とは特定の異物を認識してする免疫のことです。異物が侵入すると、最初は病気を発症しますが、そのときに異物の一部を抗原として免疫システムは抗体というものを生産します。
抗原と抗体は鍵のようになっていて、抗原が2度目に侵入すると抗体はその抗原と結びついて異物を無力化します。
利根川進氏の「免疫」の研究がノーベル賞受賞
利根川博士は「抗体を作り出す遺伝子が、組み替えられて使い回しされている」ことを明らかにしてノーベル賞を受賞しました。
抗体を作り出すのはB細胞です。子どものマウスでは抗原を認識する遺伝子はいくつもの小さな配列に分かれてつながれているのに対して、大人になると小さな配列は動的に順番が変わっていることが分かりました。
このことから、千個ほどの遺伝子で百億以上の抗体を作ることができることが明らかになりました。
異物(抗原)は、千個ではとても足りません。しかし、百億を超えることはないと思われています。したがって、必要充分な種類の抗体が千個の遺伝子の配列で百億種類の抗体を作ることが判明したことはとても重要な発見です。
まとめ
外部から侵入してくる異物をやっつける仕組みが免疫です(前編)
自然免疫と獲得免疫
利根川進氏の「免疫」の研究がノーベル賞受賞